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幼稚園の送迎バスで起こりうる事故とは?原因と防止対策をまとめてみました
小さなお子さんのいるご家庭では、送迎バスを利用しているケースは多いのではないでしょうか。
職場と幼稚園の方向が逆で通勤に時間がかかるから。
忙しい朝と夕方に少しでもゆとりが欲しいから。
生まれたばかりの赤ちゃんをつれて、上の子の送迎をするのが大変だから。
など、様々な理由が考えられます。
実際、街中を移動していると送迎バスを見かける頻度は高く、需要の多さを実感します。送迎バスのサービスがあるかないかを園選びの条件にする親御さんも多いでしょう。核家族が増えている現代では、両親の負担軽減のためには送迎バスは欠かせない存在なのです。
ただ、尊い命を乗せている送迎バスですが、100%安全であるとは言い切れません。もちろん、運転手や添乗員は責任を持って務めていますが、それでも事故が起きる可能性は0%とは言えないのです。
どのような事故が起きるのか詳しくみていきましょう。
送迎バスによる事故とは
今回は2種類の事故を取り上げていきます。
移動中の交通事故
交通事故は毎日のように起きています。2023年の交通事故発生件数は30万7,930件、一日あたり約843件、一時間で35件も起きている計算です。これを多いと見るか少ないと見るかは人によって異なりますが、交通事故が決して他人事ではないことがわかるかと思います。
実際、事故に遭ったことのない人がいる一方で、事故現場を目にしたことがある人は多いのではないでしょうか。もしも、あと一分早くこの道を通っていたら。もしも、隣の車線を走行していたら。自分に置き換えて、ゾッとした経験はあるでしょう。
正直なところ、移動中に何らかの事故に遭うケースは、防ぎようがありません。自分が制限速度を守り、急ブレーキを避けていても、相手側の不注意に巻き込まれる可能性はあります。また、近年は危険運転の車も増えていて、悲しい事故が後を絶ちません。小さな子どもは事故に遭うと死に直結しやすいため、運転手はより一層の安全運転を心がけているでしょう。それでも、公道を走っている以上、事故が起きる可能性はゼロではないのです。
「誰もがしっかりと交通ルールを守っていれば事故は起きないのに」
尊い命が奪われないようにと、そんな世の中を願わずにはいられませんね。
過失による「置き去り」
近年、送迎バスによる置き去り事故が増えました。車内に取り残されて、熱中症で亡くなったという痛ましい事件は耳にしたことがあると思います。
ここ数年の暑さは尋常ではありません。密閉されたバスという空間では、エアコンの冷気が失われると蒸し暑くなるスピードは想像以上に速いです。先ほど述べた死亡事故では、発見時に体温が40度近かったと言われています。空になった水筒と自分で脱いだ衣服が残されており、どれほどつらかったのか手に取るようにわかります。もしも自分の子どもが同じ立場だったらと、考えなかった親はいないでしょう。
置き去りは、交通事故と異なり、100%防げる事故です。予測不可能なことは起きません。では、なぜこのような事故が起きてしまったのでしょうか。原因は主に2つあります。
①降車時に車内の確認を怠ったこと
②出欠を忘れたこと
ひとつずつ見ていきましょう。
①降車時に車内の確認を怠ったこと
園に着いたら、子どもたちは指示に従って順番にバスから降ります。そのとき、乗車した子どもがちゃんと降車したか、車内に取り残された子どもはいないか確認する必要があります。もしも取り残されてしまったら、バスから脱出する方法を知らない子どもには逃げ道がありません。確認を怠らない。たったそれだけで、小さな命は守れるのです。
送迎バスには運転手の他に、添乗員が一緒に乗ることが望ましいとされています。二人で重ねて確認すれば、置き去りは確実に防げますね。
また、あってはならないことですが、置き去りになった場合を想定して、窓を叩いたり、クラクションを鳴らしたりなど、緊急時の対策を子どもに教えておくのもいいでしょう。
②出欠を忘れたこと
もうひとつの原因は、出欠確認を忘れたことです。一般的に登園後には出欠確認が行われますが、それが生存確認にもつながるということが置き去り事故で明らかになりました。万が一、置き去りにされていても、出欠確認を徹底していれば痛ましい事故を防ぐことはできたのです。
登園管理システムを導入している幼稚園も多いでしょう。登降園管理システムとは、タブレットやQRコードを使用して、園児の出欠や登園と降園の時間を管理するICTシステムのことです。そのデータをもとに保育日数や延長保育の時間などを集計できるため、業務が円滑に進みます。置き去りの事故が起きてからは、園児の出欠確認の面で特に重宝されていることでしょう。欠席の連絡が来ていないのに未登園になっていれば、すぐに異変に気づけます。
バスでの確認と園での確認。
二重の確認は、置き去りという人災を必ず防げることがわかりますね。
悲しい事故を防ぐための対策とは
送迎バスを利用する保護者は、園を信頼しています。だからこそ、自分の分身である大切な我が子を預けています。笑顔で帰ってくることを当たり前のように信じているので、それが叶わないなんて夢にも思わないでしょう。これ以上、悲しい事故を繰り返さないために、国も早急に対策に乗り出しました。
「こどものバス送迎・安全徹底プラン」施行
令和5年4月1日より、「こどものバス送迎・安全徹底プラン」が施行されました。具体的な内容を2つご紹介します。
①所在確認や安全装置の装備が義務化
所在確認という目視に加えて、安全装置も義務づけられました。街中では、安全装置搭載済を知らせるシールが貼られている送迎バスを見かけることが増えました。
装置の種類は主に2種類です。1つ目は降車時確認式で、降車するときに運転者などが車内を確認して、警報を終了させる押しボタン式の装置です。2つ目の自動検知式は、カメラなどのセンサーにより、置き去りにされた子どもを検知して警報を発してくれます。設置のために、国による補助金制度も実施されていました。(現在は終了しています)
②安全徹底マニュアルの作成
こども家庭庁のホームページでは、こどものバス送迎・安全徹底マニュアルを閲覧することができます。表紙の「みんなの点呼で幼い命を守る」という一文で、一人一人の声がけが大切だと実感させられますね。このマニュアルには、毎日使えるチェックシート、園の体制の確認、送迎用バスの装備などが詳しく書かれています。
また、安全管理マニュアル研修動画なども掲載されています。送迎バスを利用している保護者の方もご覧になって、現場ではどのように安全確認がされているか、把握しておくといいですね。
子どもの命をみんなで守っていこう
事故のニュースを受けて、全国の現場の先生方は細心の注意を払ってバスの送迎をしていることでしょう。大切な子どもを預かり、元気なまま両親のもとに帰す。それまで以上に責任を感じながら業務を全うしようと奮闘しているでしょう。
また、送迎バスには安全装置の他にも、位置情報管理システムというサービスも存在します。こちらは義務化はされていませんが、バスの到着予定を少しでも正確に知りたいという要望から活用されている画期的なシステムです。リアルタイムで地図でバスの位置が確認できたり、何個前のバス停を出発したかを通知してくれたり、時間を合わせやすくなっています。様々な面から家族を支える工夫が施されていることがわかりますね。
日本では、共働き、核家族化が進み、子育ての負担は重く圧しかかっています。負担軽減のためには送迎バスはなくてはならない存在です。運行する現場への感謝の気持ちと、子どもを無事に送迎する責任感。このふたつが寄り添いながら、子どもの命を守っていけたらいいですね。