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送迎バスの安全装置はなぜ義務化されたのか?事故防止のためのシステムを詳しく解説

送迎バスの安全装置はなぜ義務化されたのか?事故防止のためのシステムを詳しく解説
| 2025.02.15

日本では少子化が急速に進行しています。子どもが減少した背景として、所得の低下、物価高騰、晩婚化など様々な理由が考えられ、国も対策に乗り出していますが好転にはまだまだ時間を要するでしょう。一方で、子育て世代では育児や家事に対する負担が大きくなり、仕事とのバランスに悩む保護者が増加しています。子どもの尊い命をどのように守っていくか、地域社会との連携も非常に重要となります。その一角を担うのが、幼稚園や保育園の送迎バスです。

送迎時間を節約できる送迎バスは、保護者の負担を減らしてくれる心強い存在です。送迎バスのサービスがあるか否かを入園の決め手とする保護者も非常に多くなっています。

送迎バスは信頼関係のもとで成り立っています。運転手は安全運転を、添乗員は安全管理をこころがけており、保護者はバス停での集合時間を守り、大切な子どもを送迎バスに乗せています。日々の円滑な送迎を実現するために、多くの人が協力し合っているのです。

その一環として、令和5年4月1日に安全装置が義務化されました。安全装置とは車内に人が取り残されるのを防止するための装置です。義務化される以前から、安全装置を導入していた園もあるでしょう。では、なぜ義務化という流れになったのでしょうか。今回はその背景と安全装置の仕組みや効果について解説していきます。

相次いで起きた、送迎バスによる置き去り事故

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先ほど、送迎バスのおかげで時間にゆとりが持てるというメリットをご紹介しました。

しかし、送迎バスにはデメリットもあります。たとえば、他の利用者に迷惑をかけないために、到着時間に必ず間に合わせなければいけません。また、園での様子が詳しく聞けないことも保護者としては不安になるでしょう。便利な面ばかりではありませんが、時間を守る意識を持つこと、仕事が休みの日などに自分で送迎することなどで対策は可能です。しかしながら、保護者が対策できないデメリットもあります。それが置き去りによる事故です。

送迎バスに乗せた時点で、子どもの安全確保の義務は園側に一任されます。保護者は幼稚園や保育園を信頼して大切な子どもを預けているため、園側は保護者からの信頼を責任に変えて子どもを守っていく必要があります。ところが、近年、その責任が問われる事故が多発しました。

2021年7月に福岡県中間市、2022年9月に静岡県牧之原市で尊い命が亡くなりました。どちらも死因は熱中症で、数時間後に送迎バスの中から発見されています。なぜ、このような痛ましい事故が起きてしまったのでしょうか。

最も大きな原因はバス降車時の車内確認不足です。子どもがバスから降りたら、運転手や添乗員が車内に子どもが残っていないか確認しなければいけません。しかし、その確認を怠ったことで子どもが取り残されてしまったのです。乗車人数と降車人数が一致しているか、点呼していたかどうかなど、確認できる場面はいくつもあったでしょう。ひとつひとつの欠如が置き去り事故を招くという現実が浮き彫りになりました。

また、園が子どもの出欠確認を怠ったことも原因とされています。登園していない、欠席の連絡も来ていないという事実をもっと早く把握できていれば、車内に取り残された子どもの存在に気づき、その命が助かっていたかもしれません。

このような痛ましい事故が続いたことで、国も対策に乗り出しました。バス降車時の車内確認を徹底するために、安全装置が義務化されるようになったのです。

安全装置の種類と役割とは

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安全装置が義務化された背景をご紹介してきました。では、具体的にはどのような対策が施されているのでしょうか。

令和5年4月1日、「こどものバス送迎・安全徹底プラン」が施行されました。その中で安全装置について明記されています。

緊急対策① 安全装置の義務付け
(1)1.送迎バスの安全装置装備の義務化について誰が運転・乗車するかにかかわらず、バスの乗車・降車時に幼児等の所在の確認が確実に行われるようにするため、府省令等の改正により、幼児等の所在確認と安全装置の装備を義務付ける。
(引用元:こどものバス送迎・安全徹底プラン 5ページ目)

対象となる安全装置は下記の2種類です。


①降車時確認式
降車時確認式は、エンジンが停止した後、運転手や添乗員に車内確認を促す警報を発するシステムです。車両後部の装置を操作しなければ警報が解除できない仕組みのため、操作が行われないまま一定時間が経過すると、非常事態を知らせる音として車外にも警報を発してくれます。必ず運転手や添乗員が警報を終了させる必要があるため、見落としを防ぐ効果があります。

【使える構造と機能】
(引用元:送迎用バスの置き去り防止を支援する安全装置の ガイドライン )
・ 乗員の降車の際、運転手等が車内に置き去りにされた乗員がいないか確認した上で入力可能な押しボタン等の構造
・ 車内に向けて警報を発して運転手等に置き去りにされた乗員がいないか車内の確認を促す機能
・ 車内に向けて警報を発してから長時間確認が完了した操作がなされない等、運転手等が車内の確認を忘れて車から離れようとしている場合において、車外に向けて警報を発して乗員の置き去りの可能性があることを知らせる機能



②自動検知式
自動探知式は、エンジン停止から15分以内にカメラなどのセンサーを使って車内の検知を開始するシステムです。置き去りにされた子どもを検知すると車外に警報を発してくれます。運転手や添乗員が確認を忘れた場合や、確認が行われたにもかかわらず子どもが見つけづらい場所で眠っていた場合など、万が一の見落としが起きてしまったときに有効な装置です。

【使える構造と機能】
(引用元:送迎用バスの置き去り防止を支援する安全装置の ガイドライン )
・ カメラ等のセンサーにより車内に置き去りにされた乗員を検知する機能
・ センサーにより、原動機の停止等の後に置き去りにされた乗員を検知した場合において、車外に向けて警報を発して置き去りにされた乗員を検知したことを知らせる機能
・ センサーにより置き去りにされた乗員が検知された場合において、運転手等が車内に置き去りにされた乗員がいないか確認した上で入力可能な押しボタン等の構造

2022年9月5日以降に設置した安全装置(国土交通省のガイドラインに適合しているものに限る)に関しては、設置費用への補助金があります。

※安全装置の設置が義務付けられている施設
(幼稚園、認定こども園、保育園、特別支援学校など)
1台あたりの補助金額上限175,000円

一年間の経過措置を経て、現在は完全義務化となっています。設置義務違反をした場合、その園は業務停止命令の対象となります。

街中では、安全装置搭載済を知らせるシールが貼られている送迎バスを見かけることが増えました。しっかりと義務を果たしていることが地域の人々に伝わり、園への信頼感にもつながりますね。そして、安全装置の義務化により事故の可能性が低下したことで、保護者は安心して送迎バスを利用できるようになりました。もう二度と、悲しい事故は起きてほしくありません。

子どもの尊い命を守るために

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子どもの命を守る仕事は想像以上に大変です。園を運営する職員は責任を持って勤めていますが、現場の人手不足は顕著であり、ギリギリの運営を保っているのが実情です。

もちろん、子どもの命が関わっているので、注意力が欠如していた理由を「忙しかったから」ですませられません。ただ、幼稚園や保育園の人手不足と賃金の低さは長年問題視されているのに改善の目途は立たず、離職者は増加傾向にあります。人手不足でバスの送迎に慣れていない職員が担当して事故の確率が上がってしまうのは、決して教育現場に限ったことではありません。安全装置の導入を義務化したことは対策として有効ではありますが、現場の声にもっと耳を傾ける必要があることは明らかです。

そして、そのような現場をICTの力で別角度から支援することも、今後は非常に重要になってきます。たとえば、業務の円滑化を進めるための位置管理情報システムもそのひとつです。東明エンジニアリング株式会社(https://tohmei-eng.com/)では『iHere(アイヒア)』(http://trasco.jp/iHere/wp/)というサービスを幼稚園や保育園に提供しています。

・リアルタイムで地図でバス位置確認ができる
・何個前のバス停を出発したかを通知してくれる
・バスの利用予約ができる

子どもの命を守り、次世代につなぐ現場がより良い運営ができるように、社会全体が支えていく必要があるでしょう。

東明エンジニアリング株式会社
ITソリューション部

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