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送迎バスの置き去り事故をゼロに!尊い命を守るために原因と対策をまとめてみました
お子さんが通っている幼稚園や保育園で、送迎バスのサービスは提供されていますか?もしくは利用されていますか?幼稚園の送迎バスとは、事前に申し込みがあった利用者のみ乗車できるバスのことです。基本的にバス停と利用する施設の行き来が目的で、あらかじめ誰が乗るか把握できます。
送迎バスは商業施設や観光施設でも多く利用されていますが、幼稚園や保育園の名前が書かれた車体も街中で見かけることがあるでしょう。実際、園選びの際に送迎バスがあるかどうかを条件にする保護者は増えています。一方で、近年は送迎バスによる置き去り事故も多発しており、安全性の確保も重要視されています。今回は、送迎バスの家庭における重要性と置き去り事故の原因と対策について詳しく解説していきます。
送迎バスの需要が伸びた背景とは
送迎バスの需要が伸びた背景のひとつが共働き世帯の増加です。その増加率は顕著であり、2000年頃に初めて50%を超えてから、20年で7割近くまで上昇しています。原因は以下になります。
・世帯所得が減少して夫婦共に働かざるをえなくなった家庭が増加したこと
・女性活躍推進の機運が高まり、男性と同様にキャリアを積みたいと考える女性が増えたこと
・女性の社会進出を支援する企業が増えたこと
(引用先:ニチレイフーズダイレクト/共働きは当たり前?国内の共働きの現状とメリット・デメリット)
女性は家庭に入るべきという考え方は薄れ、社会的地位を求める人が増えました。また、物価が高騰し、家計を支えるために働かなければいけないという義務感もあるでしょう。
また、三世代世帯の減少も理由として考えられるでしょう。1990年代後半までは子育て世代における三世代世帯は25%を超えていましたが、2018年には13.6%にまで低下しています。昔は困ったときに支えとなってくれる祖父母がそばにいましたが、現在は子育ては保護者が担うものとして当たり前になり、頼れる存在が減ったことで保護者の負担は増加しました。
そのため、共働き世帯が増えている現代では、忙しい家庭をサポートするサービスが増えています。たとえば、預かり保育、食材の宅配、家事代行などがあり、幼稚園の送迎バスも保護者の送迎の手間を省く手段として重宝されているのです。
置き去り事故が起きた原因とは
送迎バスが家庭を支えるために非常に重要なサポート役を担っていることがわかりました。保護者は園側に大切な子どもを預け、園側は再び保護者に返すまで責任を持って業務に就いています。尊い命を守るために、怪我や事故には細心の注意を払っているでしょう。しかしながら、近年、その信頼関係を大きく揺るがす、置き去りによる事故が多発しました。メディアで大きく取り上げられた事故は以下の二つになります。
2021年7月 福岡県中間市
2022年9月 静岡県牧之原市
どちらの事故も、小さな子どもが送迎バスに長時間置き去りにされ、熱中症で死亡しています。牧之原市の事故では発見時に体温が40度近かったとされ、空になった水筒と自分で脱いだ衣服が残されていたそうです。当たり前のように笑顔で帰ってくるはずの子どもが突然いなくなる。このような痛ましい事故はなぜ起きてしまったのでしょうか。
直接的な原因は、バス降車時の確認不足です。実際に、2022年9月に死亡事故が起きた園では、運転手と添乗員は車内に子どもが取り残されていないかを確認していませんでした。また、バス送迎時の人数確認などの手順も未設定だったとされています。
さらに、子どもの出欠確認を怠ったことも、間接的な原因として問題視されています。この園では登園管理システムを導入していたにもかかわらず、適切な運用がされていませんでした。クラス担任は欠席連絡を受けていない子どもが園にいないことを認識していましたが、保護者への確認の連絡をしなかったそうです。
一連の流れを見てみると、子どもの所在確認ができる場面がいくつもあったことがわかります。しかしながら、そのひとつひとつの確認を怠ったことで、置き去りという悲しい事故につながってしまったのです。
置き去り事故防止のための対策とは
置き去り事故の原因をご紹介しましたが、交通事故と異なり、100%防げる事故だとおわかりいただけたでしょうか。確認を怠らないだけで尊い命は守れるのです。
このような事故が相次いだのを受けて、国も対策に乗り出しました。令和4年10月12日に「こどものバス送迎・安全徹底プラン」が発表され、以下の4つの概要が定められています。
①所在確認や安全装置の装備の義務付け
誰が運転・乗車するかにかかわらず、バスの乗車・降車時に、幼児等の所在の確認が確実に行われるようにするため、府省令等の改正により、幼児等の所在確認と安全装置の装備を義務付ける。
②安全装置の仕様に関するガイドラインの作成
安全装置の装備が義務化されることを踏まえ、置き去り防止を支援する安全装置(仮称)の仕様に関するガイドラインを年内にとりまとめる。
③安全管理マニュアルの作成
車側の対策である安全装置の装備との両輪として、送迎用バス運行に当たって園の現場に役に立ち、かつ、分かりやすく、簡潔な、安全管理の徹底に関するマニュアルを策定する。
④早期のこどもの安全対策促進に向けた「こどもの安心・安全対策支援パッケージ」
(1)送迎用バスへの安全装置導入支援
(2)登園管理システムの導入支援
(3)こどもの見守りタグ(GPS)の導入支援
(4)安全管理マニュアルの動画配信や研修の実施等
(引用元:こどものバス送迎・安全徹底プラン 5ページ目)
バス降車時の確認不足に対しては安全装置の義務化を、園児の出欠確認不足に対しては登園管理システムの導入支援をするという内容が盛り込まれています。
安全装置には「降車時確認式」と「自動検知式」の2種類があり、どちらも異常を検知すると非常事態を知らせる音として車外に警報を発してくれます。2022年9月5日以降に設置した安全装置(国土交通省のガイドラインに適合しているものに限る)に関しては、設置費用への補助金制度もあります。
さらに、園による安全管理の徹底を促すために、緊急対策の一つとして安全管理マニュアルも作成されました。毎日使えるチェックシート、園の体制確認、送迎業務モデル例、ヒヤリハットの共有など、園ですぐに取り組める内容がわかりやすく書かれています。園の運営に関わるすべての人が共有できるようなマニュアルは、子どもの命を守り、保護者との信頼関係を築くためにも必要不可欠となってきています。詳しい内容については下記をご覧ください。
こどものバス送迎・安全徹底マニュアル
(内閣官房・ 内閣府・ 文部科学省・ 厚生労働省)
また、あってはならないことですが、万が一置き去りになった場合を想定して、窓を叩いたり、クラクションを鳴らしたりするなど、緊急時の対策を子どもに伝えておくことも大切です。
命を守る現場を支えるために社会ができることとは
悲しい事故を繰り返さないために、安全装置やマニュアルの徹底など対策をご紹介してきました。置き去り事故の原因であるバス降車時の確認不足も園児の出欠確認不足も、ヒューマンエラーによるものと結論づけられるでしょう。
ヒューマンエラーが起きる原因のひとつが疲労です。命を預かる仕事は責任重大で、人手不足はどの業界でも顕著ですが幼稚園や保育園でも厳しい環境となっています。小さな子どもと接する仕事に明確な正解はなく、必ず人が人と関わっていかなければいけません。一人一人の業務が増えると注意力が散漫になり、ヒューマンエラーが起きる可能性は上がってしまいます。その可能性を低くするために、前述したバスの安全装置は車内確認を促し、人によるミスの確率を低下させる効力を持つのです。
このように、ICTの力を導入することは現場の負担軽減とスマートな運営につながります。東明エンジニアリング株式会社(http://q-tec.com/)が提供する位置管理情報システム『iHere(アイヒア)』(http://trasco.jp/iHere/wp/)も、送迎バスのスムーズな運行を支える手段として多くの現場で利用されています。
『iHere(アイヒア)』には、リアルタイムでバスの位置確認ができること、何個前のバス停を出発したか把握できること、バスの利用予約ができることなど、便利な機能が搭載されています。到着時刻が予測できると保護者は時間を合わせやすく、園側も滞りなく子どもを乗降させられるため業務の効率化が期待できます。時間にゆとりが持てると心にもゆとりが生まれます。職員によりよい環境を提供し、次世代を担う子どもの教育を充実させたいとお考えの方は、導入を検討してみてはいかがでしょうか。