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幼稚園の送迎バスを利用するなら覚えておこう!気になる管理体制を徹底解説
近年、送迎バスにおける死亡事故が起きたことは記憶に新しいかと思います。2021年7月に福岡県中間市の保育園、2022年9月には静岡県牧之原市の幼稚園で子どもがバスの中に置き去りにされ、熱中症により亡くなりました。事故を受けて、自分が利用している送迎バスの管理体制は適切なのか不安に思った保護者が多いのではないでしょうか。
今回は送迎バスに関する情報や現場の運行状況、管理体制をご紹介していきます。現在利用している保護者として、または今後利用を検討している保護者として、送迎バスに対する理解を深めるきっかけになれば幸いです。
送迎バスについて覚えておきたいこと
まずは、送迎バスにおける基本情報を確認しておきましょう。
送迎バスの種類や運行条件とは
幼児の送迎を目的とした車両のことを幼児送迎バスと言います。幼児とは児童福祉法で満1歳から小学校に就学するまでの子どものことで、その多くが幼稚園や保育園を利用しています。
主に幼児送迎バスとして使われているのは、小型幼児送迎バスと中型幼児送迎バスです。
小型幼児送迎バスは、大人2名、幼児12名の比較的小さな車両であり、普通免許での運転が可能です。中型幼児送迎バスは大人3名、幼児39名が乗車可能な車両であり、中型免許が必要となります。(以下、幼児送迎バスは送迎バスと表記します)
送迎バスには必ず幼児専用シートが備えつけられており、進行方向に前向きに設置されています。大人が幼児シートに着席すると道路交通法違反となってしまうため、添乗員は幼児シートの後部に設けられた引率者用のシートを使用しなければいけません。
送迎バスにおける添乗員の仕事は、保護者から引き渡された子どもを幼稚園まで送り届けることです。そして、帰りは一緒にバスに乗車して、子どもを保護者のもとに返します。しかし、現法では送迎バスに必ず添乗員が乗車しなければいけないという法律や規制はなく、現場の任意となっています。ただし、子どもの安全確保のために添乗員が同乗しているケースは多く、全体の98%と非常に高いです。また、幼児専用シートへのシートベルトは義務化されていませんが、引率者シートに関しては平成29年4月より装着が必要となっています。
また、国土交通省では最近まとめられた「幼児用専用車の幼児用座席に適した座席ベルトに関するガイドライン」に基づき、自動車メーカー及び自動車部品メーカーに、幼児専用車の幼児用座席に適したシートベルトをできるだけ速やかに(2026年度(令和8年度)中を目途に)市場投入するよう要請することとしています。
前述しましたが、送迎バスは乗車可能な人数が決まっています。もしも利用している園がバスを一台しか保有していなければ、一度に全員が乗り切れないと複数回の運行が必要です。また、複数台保有していても、台数分の運転手の確保ができれなければ運行はできません。送迎バスの運行も業務の一環です。子どもの安全確保のために、法律を遵守して安全管理を徹底する必要があります。
送迎バスの需要と供給、問題点とは
共働き家庭の増加と保護者の負担軽減のために、送迎バスの需要は高まっています。送迎バスのサービスがあることを条件として園探しをしている保護者は多いでしょう。しかしながら、運行率は1877施設のうち352施設と2割弱にとどまっており、決して高いとは言えません。また、希望どおりの幼稚園や保育園に通えないことも多く、希望が叶わなかった場合は遠くの園を利用しなければいけません。毎日タクシーや路線バスを利用するのは現実的ではないため、送迎バスがないと通えないと判断した場合、待機児童という問題にも直面してしまいます。
保護者の需要に応じて、送迎バスを運行させたい園もあるでしょう。しかし、前述したとおり、送迎バスを運行するには運転手の確保が必須であり、子どもの安全確保のために添乗員の同乗も望ましいとされています。つまり、人員確保が現場にとっては大きな負担となっているのです。
保育園・認定こども園での通園バスの運行状況実態調査によると、直接雇用の運転手の割合は63.4%と最も高くなっています。しかし、運転手が休んだ場合は園長や他の職員など、園を運営する誰かが代わりに運転しないといけません。幼稚園や保育園は慢性的な人手不足で一人一人が膨大な業務を抱えています。そこに送迎業務が加わってしまうと負担は計り知れず、送迎に不慣れだと不測の事態が起きる可能性もあります。そして、冒頭で述べたような置き去り事故につながってしまうのです。
では、このような問題を解消できる方法はないのでしょうか。
送迎バスに関する管理とは
相次いだ痛ましい事故を受けて、保護者は送迎バスに安全性を強く求めるようになりました。園側はより一層の配慮のもと、日々の運行に取り組んでいることでしょう。つまり、事故を起こさないためには送迎バスを運行しないという極論に走るのではなく、どのような管理がなされれば安全性を高められるかを把握することが重要です。ここからは、現在施行されているバスに関する管理義務と現場に役立つ管理サービスをご紹介します。
「こどものバス送迎・安全徹底プラン」(安全装置/管理マニュアル)
令和4年10月12日、国によって「こどものバス送迎・安全徹底プラン」が発表されました。
まず、注目したいのが安全装置の義務化です。安全装置とは車内に人が取り残されるのを防止するための装置です。「降車時確認式」と「自動検知式」の2種類があり、どちらも異常を検知すると車外に警報を発してくれます。2022年9月5日以降に設置した安全装置(国土交通省のガイドラインに適合しているものに限る)に関しては設置費用への補助金制度も設けられています。
もちろん、子どもの所在確認のためには目視が大前提です。乗車した子どもが降車したかを運転手や添乗員が確認しなければいけません。しかし、送迎に不慣れな職員の運転も考えられるため、安全装置で予防線を張れば事故を防げる確率はぐっと上がるでしょう。
さらに、園による安全管理の徹底を促すために安全管理マニュアルも作成されました。送迎業務モデル例も掲載されており、運転手の登園時から子どもが全員降車した後の行動まで詳しく明記されています。これから送迎バスを運行する園にとっても非常に参考になる内容です。このように、園の運営に関わるすべての人が共有できるようなマニュアルは緊急時の運転手交代にも役立つでしょう。添乗員も子どもの命を守り、保護者との信頼関係を築くために内容を把握しておく必要がありますね。
詳しい内容については下記をご覧ください。
こどものバス送迎・安全徹底マニュアル
(内閣官房・ 内閣府・ 文部科学省・ 厚生労働省)
位置情報管理クラウドサービス「ihere」/東明エンジニアリング株式会社
現在、送迎バスを運行している現場で導入が進んでいるのが位置情報管理システムです。位置情報管理システムとは位置情報の把握、収集を通じて業務効率化を図り、安全性の向上に貢献してくれる画期的なサービスです。
東明エンジニアリング株式会社(https://tohmei-eng.com/)では、位置情報管理クラウドサービス「iHere(アイヒア)」(http://trasco.jp/iHere/wp/)を提供しています。
「iHere(アイヒア)」による保護者側のメリットは、スマートフォンでバスの現在地をリアルタイムで確認できることです。交通渋滞に巻き込まれたり、長距離移動や長時間の運行で到着時刻がズレたりすることは大いに考えられます。しかし、「iHere」があれば現在地が把握できるため時間を合わせやすくなり、なかなかバスが到着しないという不安の解消にも役立ちます。
また、園側のメリットは、バスの利用予約により利用しないバス停をスキップできることで、無駄な運行をする必要がなくなることと、保護者が直接送迎バスの位置を把握できるため、朝夕の多忙な時間帯に保護者からの問い合わせが激減する事で、園児の対応に集中できる事があげられます。ヒューマンエラーによる事故を防ぎ、人手不足に負けずに業務の円滑化を実現するには管理能力を上げることが必要不可欠です。ICT(Information and Communication Technology)という通信技術を使うと、人と人、人とものをつなぐことで現場の負担軽減とスマートな運営が叶います。
子どもの安否確認にもつながる「登園管理システム」
位置情報管理システムと同様に、近年は登園管理システムの導入も進んでいます。登園管理システムとは、子どもの出欠や登園と降園の時間を管理するシステムです。前述した「こどものバス送迎・安全徹底プラン」の中の「こどもの安心・安全対策支援パッケージ」にも登園管理システムの導入支援をするという内容が盛り込まれています。
このシステムは、もともとは登園状況や出席日数の確認、延長保育による料金を明確にして、業務の効率化を図ることが目的でした。しかし、送迎バスの置き去り事故が起きてからは子どもの安否確認にも活かされています。
欠席連絡を受けていないのに子どもの出席が確認できなければ緊急事態です。そして、その子どもが送迎バスを利用していた場合は置き去りの可能性も考えられるため、すぐに確認に向かうことができます。送迎バスに直接関係するシステムではありませんが、子どもの命を守るための管理体制のひとつと言えるのではないでしょうか。
まとめ
送迎バスに関する管理体制についてお話してきました。人手不足で忙しい現場を支えるためには様々なシステムやマニュアルが存在します。運営の効率化と現場の負担軽減のために導入を検討してみてはいかがでしょうか。
また、送迎バスの運行に関しては外部に委託するのもひとつの方法です。管理を専門の方に任せると職員は通常の仕事に集中できます。運転手が不在でも、外部委託していれば必ず委託先が補充してくれるため、園側が慌てることはありません。また、日々の車両点検や清掃、安全運転のための定期的な講習も受けているため、安心して任せることができるでしょう。管理の方法を見直して、よりよい運営にお役立てください。