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幼稚園の送迎バスを支えるシステム3選!現場の負担軽減につながる仕組みや話題のICTを徹底解説
利用されている幼稚園では、送迎バスは運行されていますか?送迎バスは忙しい時間帯に送迎の時間を節約できるので保護者に重宝されている登園手段です。また、幼稚園が遠い、自家用車を保有していないなどの問題も送迎バスがあれば解決できます。
しかしながら、令和3年に実施された保育園・認定こども園での通園バスの運行状況実態調査によると、送迎バスの運行率は1877施設のうち352施設と2割弱と低水準です。需要がある一方で、供給が追いついていないことが伺えますね。
では、なぜ運行率は低迷しているのでしょうか。今回は、送迎バスにおける問題点と解決に寄与するシステムについて詳しく解説していきます。
送迎バスの現状を知っておこう
はじめに、送迎バスがどのような管理のもとで運行されているのか確認しておきましょう。
送迎バスの種類、運行状況
主に幼児送迎バスとして使われている車両は2種類あります。
・小型幼児送迎バス
定員は大人2名、幼児12名。普通免許での運転が可能。
・中型幼児送迎バス
定員は大人3名、幼児39名。中型免許の取得が必要。
(以下、幼児送迎バスは送迎バスと表記)
送迎バスを運行するためには必ず幼児専用シートの装備が必要です。しかし、シートベルトは義務化されておらず、安全性が問題視されてきました。現在は、2024年3月に国土交通省により「幼児専用車の幼児用座席に適した座席ベルトに関するガイドライン」が発表されています。2026年度中を目途に自動車メーカー及び自動車部品メーカーに、本ガイドラインに適したシートベルトを備えた幼児送迎バスを市場に導入することを要請しています。既に自主的にシートベルトを導入していた現場もありますが、今後は全国的に普及が進み、安全性への向上へとつながっていくでしょう。
また、現法では添乗員も義務化されていませんが、保育園・認定こども園での通園バスの運行状況実態調査によると全体の98%は同乗しています。添乗員は保護者から引き渡された子どもを幼稚園まで送り届け、帰りは一緒にバスに乗車して保護者のもとに返すのが仕事です。乗車は任意となっていますが、現場では子どもの安全確保に対する意識が高いことがわかりますね。
送迎バスの需要と供給、問題点とは
共働き家庭の増加による保護者の負担軽減という理由を筆頭に、送迎バスの需要は高まっています。送迎バスのサービスがあることを条件として園探しをしている保護者は多いでしょう。では、なぜ運行率は伸び悩んでいるのでしょうか。原因のひとつとして考えられるのが現場の人員不足です。
前述しましたが、送迎バスを運行するには運転手の確保が必須であり、子どもの安全確保のためには添乗員の同乗も望ましいとされています。しかし、幼稚園や保育園は慢性的な人手不足で各々が膨大な業務を抱えています。たとえば、行事が近づくと制作のために仕事を持ち帰るという事例は耳にしたことがあると思います。。そこに送迎業務が加わってしまうと負担は計り知れず、許容量を超えると退職にもつながってしまいます。
送迎バスも業務の一環であるため、現場は責任を持って運行しなければなりません。職員の
負担が増え、注意力が散漫になり、子どもの安全を脅かす事態は避けたいのです。送迎バスを運行したくても難しいという現場は多いのではないでしょうか。
人材不足と現場の困窮は、決して教育現場に限ったことではありません。しかし、小さな子どもが相手の幼稚園や保育園は、AIやロボットの力を借りるには限界があります。成長著しい時期に関わる教育の現場に正解はなく、一人一人に向き合う必要があるからです。
送迎バスに関連するシステム3選
子どもが相手の仕事は人間の力が必要だとお伝えしました。しかし、すべての業務を人間が行うのではなく、デジタルやITといった先進的な力を活用できる場面はいくつかあるのです。ここからは、送迎バスの問題点や現場の悩みの解消に役立つシステムを3つご紹介します。安全かつ円滑な運行を支える手段として参考にしてください。
安全装置
安全装置とは車内に人が取り残されるのを防止するための装置です。具体的には2種類あります。
・降車時確認式
エンジンが停止した後、運転手や添乗員に車内確認を促す警報を発するシステムです。車両後部の装置を操作しなければ警報が解除できないため、見落としを防ぐ効果があります。
・自動検知式
エンジン停止から15分以内にカメラなどのセンサーを使って車内の検知を開始するシステムです。置き去りにされた子どもを検知すると車外に警報を発するため、見落としが起きてしまったときに有効です。
安全装置は令和5年4月1日に「こどものバス送迎・安全徹底プラン」によって義務化されています。義務化になった理由は送迎バスによる置き去り事故が多発したことです。2021年7月に福岡県中間市の保育園、2022年9月には静岡県牧之原市の幼稚園で子どもがバスの中に置き去りにされ、熱中症により亡くなりました。最も大きな原因はバス降車時の車内確認不足とされ、対策のひとつとして安全装置が義務づけられました。設置義務違反をした場合は業務停止命令の対象となります。
位置管理情報システム
位置情報管理システムとは位置情報の把握、収集を通じて業務効率化を図り、安全性の向上に貢献してくれるサービスです。ICT(Information and Communication Technology)というインターネットを活用した情報共有を実現する技術を利用しています。
東明エンジニアリング株式会社(https://tohmei-eng.com/)では、位置情報管理クラウドサービス「iHere(アイヒア)」(http://trasco.jp/iHere/wp/)を提供しています。
「iHere(アイヒア)」にはバスの利用予約機能が搭載されており、利用者がいないバス停はスキップすることができます。また、バスの現在位置がスマートフォン等の地図で確認できるので、出発時刻になっても姿が見えずに延々と待ったり、何か起きたのではないかと不安になったりする必要がありません。「iHere」が提供する情報があれば滞りなく子どもを乗降させられるため、業務の効率化につながります。
また、保護者にとってもスマートフォンでバスの現在地をリアルタイムで確認できるため、送迎の時間が合わせやすくなります。交通渋滞に巻き込まれてなかなかバスが到着しなくても、バスの位置確認ができれば不安も解消されますね。
登園管理システム
送迎バスに直接は関係しませんが、登園管理システムもご紹介します。登園管理システムとは出欠や登園と降園の時間を管理して、業務の効率化を図るシステムです。出席日数の確認や延長料金の明確化など現場の負担を減らせるメリットがあるため、国も導入を支援しています。
登園管理システムは、送迎バスの置き去り事故を受けて、子どもの安否確認にも活かされています。欠席連絡を受けていないのに出席が確認できなければ、職員は速やかに保護者に連絡をとります。そして、その子どもが送迎バスを利用していた場合は置き去りの可能性も考えられるため、すぐに確認に向かうことで事故を防げるのです。
送迎バスの置き去り事故は安全装置の義務化で防げる確率は上がりましたが、登園管理システムも事故防止に力を貸してくれるでしょう。
ICT補助金について
保育園等におけるICT化推進事業という言葉を耳にしたことがありますか。この事業は、現場の業務負担の軽減を図るために、デジタル化を推進するものです。こども家庭庁における令和5年度の補正予算において現場の環境改善のためにICT補助金が盛り込まれました。
前述した登園管理システムはICT補助金の対象であり、「こどものバス送迎・安全徹底プラン」のなかでも導入が支援されています。また、位置管理情報システムも対象なので、到着時刻を把握したい保護者の要望を叶える手助けになります。
実施主体は都道府県または市町村等です。各種システムの導入がまだでしたら、この機会に検討してはいかがでしょうか。
まとめ
幼稚園や保育園は、子どもたちが成長著しい幼少期を過ごす大切な場所です。そして、未来を担う子どもたちを預かる現場を支えるために、デジタルを活用したシステムは今後も需要が増えるでしょう。システムの導入で業務の負担が軽減すれば、職員のやりがいにつながります。環境が整備されることで、人手不足にも歯止めがかかるかもしれません。
ヒューマンエラーによる事故を防ぎ、業務の円滑化を実現するために、画期的なシステムは積極的に活用していきたいですね。